2024年に創った作品の紹介と開発・展示で感じたこと

ガジェットを作る
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はじめに

今年に生み出した作品たちの紹介」と「それらの開発やイベント展示で感じたことを共有」をします。

この記事はマイクロマウス Advent Calendar 2024の12日目の投稿です。

昨日はtennisyiさんの「3Dプリンタのいろいろ」でした。冒頭で紹介いただいている作品は私も関わっていました。

1つの作品を複数人で協力し、皆が得意分野を生かすことで、1人では思いつかない・到達できない魅力あふれるものになったと思います。チームでものづくりを行う醍醐味かもしれません。

「コンテストに参加することでモチベーションが保たれる」とありましたが、私の周りでは近年「イベントコンテスト展示会ドリブン開発」という考え方が生まれました。(使えるマインド。目標設定は大事です。)

メイカーズイベント:Maker Faire Tokyo 2024

さて、今年は例年に比べ、多くの作品を作った年になりました。実は意識的に新しい作品を創り、交流の場に出向こうと行動をしていました。

具体的に参加したイベントは、普段のマイクロマウスロボットコンテスト(5件)だけでなく、アイデアコンテスト(3件)や展示会(5件)、ライトニングトーク(3件)などです。積極的に行動したおかげで、イベントに来場された方や参加しているメイカーとの交流を通じて新しい経験ができ、大変充実した年になりました。

行動した理由としては、今までほぼ使ってこなかったデバイスをもっと気軽に使えるようにしたかったり、考えついた作品アイデアを具現化したかったりなどです。・・・というのに加え、ココロの持ち様でとりあえずDoするに走った結果もある気はします(イロイロ考えるお年頃)。

しかしながら、行動したことには意味があったと感じています。遊びの技術幅を広げられただけでなく、とくに交流の幅も広げられたと思っています。コンテストでも実績を上げられました(自信にもなる)。

まずは動くことも大切なんだと改めて思いましたね。

「行動がすべての成功への基本的な鍵である」 by ピカソ

めちゃくちゃ作品を作りまくった偉人と比べたら極小の数ですが、コンテストや展示会などに向けて今年製作した4作品を紹介しつつ、開発・展示で感じたことを共有していこうと思います。

スケートロボット SKAT(スケイト)

まずはスケートをするロボットです。タイヤ自体をギヤとモータで直接回転させるものではなく、脚部を左右に開閉する動作だけでタイヤが回り、前進やターンを実現しています。4脚の足をタイミングよく動かします。

脚は4つあり、各脚に3つのRCサーボFS92Rがついています。フレームは3Dプリント(FLASHFORGE)でABSで作っています。軸の構成としては一般的に多く出回っているクモロボットと同じ方向です。

脚の先にはタイヤがついています。脚を動かすことで、このタイヤが転がり、ロボットが前進・後退したり、ターンしたりします。

ロボットの脚の動かし方は、脚をどこに置くか「接地点x, y, z」で決めるようにしています。これらの値を次の計算式を使い、各サーボの角度に変換します。サーボの制御可能周期20msごとに角度指令をだすことで、床でスケートする動作をしています。

脚を開閉する動作は想像以上に負荷が大きいようで、地面が絨毯のように引っかかりやすかったり、綺麗に動かさないと、サーボに負荷がかかり、内部のギヤが欠けて滑ってしまうトラブルが起きてしまい、部品交換が大変でした。

構造にかかるモーメントの大きさによりますが、類似品で金属ギヤのサーボもあるため、このサイズ感で作るときはプラギヤのサーボは避けた方がよさそうです。

ハードはM5Stack Grayを使っています。またServo2というLED driverが入っているデバイスをスタックし、各サーボを動作させることにしました。M5Stackは簡単にWifi通信もできるため、このロボットではコントローラを準備して、イベントでラジコン操作をすることで楽しんでもらっています。

コントローラにはWiiのヌンチャクを使っています。安くて、入力もそこそこできるという便利デバイスです。(ぜひ使ってみてください)

このロボットは3月2日, 3日に行われたKariya Micro Maker Faireに出展しました。初お披露目になります。

遊んでくれた、見てくれた来場者や出展者の方々にタイヤを直接動かさないところなどに面白さを感じてもらえ、子供たちの中には欲しいと思ってくれた子もいた大人気のロボットになりました。うれしいですね。

展示会に作品をだして参加することは初めてではありませんが、ラジコンの展示は初めてでした。近年はマイクロマウス(小型移動ロボット)の展示を多くしていたため、展示品は基本的に来場者が触れるものではなかったです。

ラジコンは会場に来られた方が直接触って遊んでくれるという面白さがあります。私が想定していなかった動かし方をさせる猛者も現れ、新しい発見もありました。(面白いがしかし、一つの脚に荷重がかかる動作でサーボがお亡くなりになったことも。)

また、展示会場をラジコンをしながら歩き回ったりすると、多くの人の目に触れ、声をかけてもらうなどもありました。何より、広いエリアでロボットを動かし続けることができます(自宅は狭くて縦横無尽に動かすことは難しかった)。

会場を練り歩くのは楽しく、癖になってしまいそうです。

出展者の方たち、来場者の方たちと作品を通じて交流でき、楽しい経験ができました。皆さんもぜひ機会があれば、作品を展示会に出品してみてください。(展示会でラジコンはいいぞ!)

光と加速度で遊ぶ Cube maze(キューブメイズ)

次に、手の中でキューブを転がして、光を移動させ、繋がった6面の迷路を解くガジェットです。6面にLEDが294個ついているため、簡易なディスプレイにもなることからカラフルな色を表示させて楽しむこともできます。

この作品は「Mouser Make Awards 2024」「M5Stack Japan Creativity Contest 2024」に向けて仕立てました。

Mouser Make Awards 2024ではProtopedia賞、M5Stack Japan Creativity Contest 2024では第3位を頂いています。作品を評価いただけるのはとてもうれしいですね。

このCube mazeのシステム構成は次のようになっています。

フレームを3Dプリント(Creality K1, PLA)で作り、その中に必要な回路や部品を詰め込んでいます。このLED基板も自作しており、基板面が意匠になるため、アートワークにもこだわりを入れました。

一見、表からは全く配線が見えないようにしており、綺麗なレジスト面が覗けます。

LEDが294個もあると、手ではんだ付けなど到底やっていられません。さらに手ではんだ付けをするとLEDがきれいに並ばず、傾いたり浮いたりと見栄えが悪いです。

そのため、ホットプレートを使ったリフローを行っています。セルフアライメントでLEDはきれいに整列するので圧巻です。(このリフローですが、マイクロマウスの関西地区大会から帰ってきた夜に始め、夜中にLEDを黙々と載せ、ガンガン焼いていました。ワタシ、よくやった。)

Mouser Make AwardはMaker Faire Tokyoで本選が行われました。

私は残念ながら本選には進むことは出来ませんでしたが、Protopedia賞を頂けたことで、Maker Faire Tokyo当日に関係者の方々とお会いできました。さらに賞品を直接受け取る機会もいただけ大変感謝です。

実際に作品を直接見ていただけ、ポジティブな感想をもらえるとモチベーションが上がりますね。作品を気に入ってくれる方がいるととてもうれしい。

また、STEAM教育に力を入れている他の展示会に出品させていただき、子供たちが作品で楽しんでいる様子をみれました。ただキューブメイズの迷路を難しく設定しすぎたのか、なかなかクリアできる人が現れず。

ちょっとやっちまったかなと不安になっていたら、サクッと解いていく人が現れたり、人の能力は様々なんだなーと思う出来事でした。

他にも、この作品をワークショップに使えないか?と声をかけていただいたりと大変うれしいこともありました。(実現はしませんでしたが、ちょうどいいデバイスを生み出してやってみるのも楽しいかもですね)

この作品「キューブメイズ」のより詳しい説明は、作品投稿サイトProtopediaにページがありますのでご覧ください。

コンテストに参加してコメント・感想をもらえるだけでなく、展示会に出品して、声をかけていただけたり、賞を頂けたりと活動の幅を広げてくれた作品です。

カメラロボトレーサ Vision(ビジョン)

続いては、カメラを使ったライントレーサ(ロボトレーサ)の紹介です。

ライントレースはマイクロマウスというロボットコンテストです。ラインをフォローしてコースを一周する速さを競います。ライントレースへの参加は今年が初めてでした。ロボットはM5StackのUnit Vというカメラでラインを検出して、2つのタイヤをモータで回転させ走行するものを作っています。

カメラの中にはマイコンが入っており、撮った画像を処理することができます。言語はMicroPythonです。画像を二値化し、白色のラインに対して回帰直線を推定し、その方向に移動するように制御しています。

次の動画は、手でカメラを持ってライン上をなぞってみたものです。白いライン上から表示されている黒い線が回帰直線になります。この計算結果から回帰直線の角度やピクセル上の位置などをM5Stack側へシリアル通信で送り、モータを動作させるようにしています。

気になるだろうカメラの取得頻度(fps)ですが、動画の出力をやめたり、バッファをダブルにするなどに努めると50fps程度は出せました。

当初、このトレーサで使っているモータはFS90Rというサーボの信号で無限に回転させることができるものでした。てっきり、サーボなのでセンサが無くてもそこそこきれいに回るような気がしていましたが、そんなことは無く全然きれいに回らないです。

さらに、サーボの信号の範囲でリニアに速度が変化するとも思っていたのですが、それもなくバンバンな出力特性をしていました。

※1500usで停止とデータシートにあるが止まらず。700~1500, 1500~2300で回転だが、全くリニアでない。

仕方ないので無理やりLUTでそれっぽくリニアに変化するようにして走れるようになりましたが、低速(スタート時)にうまく直線で移動できなかったりと、簡単なばらつきや劣化でうまくいきませんでした。

そのため最新の構成ではDCモータへ改修をしています。特性はリニアになりましたが、とりあえず手に入れたDCモータではトルクが足りないのが見てわかるため、精進が必要そうです。

DCモータ機体

そういう状況のロボットでしたが、先日行われた金沢草の根大会にて見事にゴールできたのは嬉しい出来事です。あきらめずに大会朝の競技開始前にカメラの調整などを頑張った甲斐があり。よく走ってくれた!全国大会に向けて、ロボットのレベルアップを図りたいと思います。

現在のロボトレーサーはフォトトランジスタ + LEDを使ってラインを検出することが一般的です。ロボットを速く走行させるという観点からも理にかなっている構成をしています。今回は速さよりも、使ったことない技術や新しい構成を考えて試したいという欲望からカメラを使いました。

新しいことをすると新しい課題が出ます。例えば、金沢草の根大会で気づいたのは、会場の光源の位置によってライン上にロボット自身の影が映り、カメラでその部分をラインとして読み取れないトラブルです。

こういった新しい知見や課題解決を通じて学び作ったロボットでマイクロマウスの大会に出てみると、技術力のある・様々な技術を背景に持つ選手たちと会話がはずみます。皆、技術の話が大好きですね。議論を通じていいアイデア・気づきを得られ、さらに良いロボットが作れそうです。

掃除ロボットシステム ⚡電光石火☆ぴかぴかクリーナーズ

最後の作品は、チームで作ったお掃除ロボットを紹介します。某イベントに向け、半年かけて生み出した自慢の作品です。複数のロボットが床を同時に駆け抜けます。

ロボットは簡単に表現するなら、マイクロマウスに掃除機機構 + 通信機能を付けたものになります。床のフィールドは光らせるようにしました。ロボットの走行前にこれから移動する経路を表示し、ロボットが走行した後は床の色を変えています。どこを動いたか視覚的にわかりやすいです。

次の動画は3台のロボットが同時に床を移動します。床に散らばっているノートやブロック、靴下などにはぶつからないように動きます。ロボットの構成は、基礎がマイクロマウスなので某掃除ロボットより速く動きます。

床に置いてあるものはフィールドの上部に設置したカメラで物体を検出し共有しています。ロボットやカメラ、フィールドは全てWiFi経由で繋がっており、サーバとなっているPCを介して情報・命令を送受信しています。

私は光るフィールドを主に作りました。上記で紹介したキューブメイズのプログラムを応用しています。このフィールドは私が過去作った作品の中で最も大きいです。サイズは1.5m x 1.5mになります。実際に組み上げてみるびっくりするくらい大きく、うまく動いたときは爽快でした。

フィールドの床材はアクリルのキャストで、背面を白塗装しています。このアクリル材の下に、基板が64枚つながっており、総LED数は1024個にもなります。

LEDはメンバーと協力してくれた仲間の計5人で半日かけて作り上げました。クリームはんだの塗布から、チップマウント、リフロー、手はんだ、検査、手直しと工程を組んでライン作業をしています。感謝しています。(本当に大変だった。フラックスの蒸気顔パックだった)

さらに、この基板たちを床に綺麗に並べるための部品を81個、アクリル材を基板から離して設置するための部品を94個、アクリル板を固定する部品を4個と全て3Dプリントを使い、印刷に約50時間かかりました。

かなりの労力を使ったものになりましたが、とてもいい出来だと思っています。

今回、5名で一つの作品を作り上げました。過去1人でアイデアをカタチにすることが多かったため、新しい面白さと難しさを感じています。一人では思いつかないアイデアが出ますし、そして形になったときは驚きでした。それぞれの得意分野ががっちりハマって機能結合できた時は喜びを感じずにはいられません。

一方、こういった趣味開発でも仲間がやっていることの詳細は把握しづらかったです。成果の共有には何かハードルがあるのだなと感じています。

しかしながら、メンバーにも恵まれ、ハード・ソフトのプロかつそこそこ横断的な知識を持った人たちの集まりだったため、難なく会話が成立し、とてもスムーズな開発ができました。

一人で開発することが多いマイクロマウスとは異なる経験をチーム開発では得られますので、ぜひチャンスがあればチームで一つのアイデアを作ってみることに挑戦してみることをお勧めします。私は大変良い機会となりました。

終わりに

本年は4作品を生み出し、今までやらなかったイベントに参加してきました。イベント来場者やメイカーの方々とも交流し、面白い経験を積めたと思います。

記事を読んでくださった方もマイクロマウスロボットコンテスト加え様々なイベントに参加してみるのはいかがでしょうか。新しい発見の機会になると思います。

以上「今年に生み出した作品たちの紹介」と「それらの開発やイベント展示で感じたこと」でした。

さて、明日のマイクロマウス Advent Calendar 2024は、mhrさんの「スラロームの設計について」です。スラロームはマイクロマウスの動作の基礎の一つになります。どのように設計しているのか大変気になるところ。ブックマーク必至です!

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