KiCad(回路CAD)で作成した名刺基板の製造データで「プリント基板製作メーカ(JLCPCB)に手配する方法・注意点」と「ワイヤレス給電で基板を光らせるための名刺立ての素材」について述べます。
基板メーカにプリント基板を手配する
KiCad(回路CAD)で基板の設計をしたら製造メーカに発注をします。前回の記事でワイヤレス給電の回路を名刺基板に組み込みました。そのデータを現物のカタチにしていきます。
基板製造メーカについて
基板製造メーカにKiCadで作った製造データを送ることでプリント基板を製造してくれます。製造するためのデータを一般的にガーバーデータと呼んでいます。
初めて基板づくりをする場合は、どんな基板製造メーカがあるかわからないと思いますので、筆者が過去使ったメーカをいくつか記載します。
メーカ | メインの 拠点 | サイトの 言語対応 | コメント |
P板.com | 日本 | 日本語 | 品質はピカイチ。明確な基準にのっとった製造でサポートが手厚い。 日本のサイトで意思疎通はしやすい。 ただ値段が高いのでここぞという時に使う。 |
Elecrow | 中国 | 英語 | ロボット用でt0.8mmのマットブラック基板を依頼。 製造が速い。注文枚数+αで届くこともあり。 4年経ったがクラックで動作不良等も起きていない。 |
PCBGOGO | 中国 | 日本語 | 22×17.5mmの小さいサイズの白色レジスト基板を依頼。 製造が速い。 海外だが日本語のため英語がわからなくても安心。 |
JLCPCB | 中国 | 英語 | この名刺基板をブラックレジスト基板で製造を依頼。 製造が速い。 日本時間夜3時頃にサポートに連絡しても返信がすぐ来てすごい。 |
私自身はいずれのメーカでも製造トラブルになったことありません。コミュニティで聞き込みをしてみると、海外メーカではシルクやレジストが大きく異常にずれていることがあったりなど、いくつかはあるようです。(わずかなずれは許容しましょう)
ただ、いずれのメーカもひどい状態の場合は作り直して送ってくれるなどご対応をしていただけていると聞いています。仮にたまにあったとしても、価格と製造スピードが素晴らしいです。
今回の名刺基板の製造はJLCPCBに発注をしています。新規開拓の目的でちょうどクーポンの案内もでておりオトクでした。22年11月現在も、新規ユーザー向けでキャンペーンを行ってくれています。
JLCPCBで作成した基板の出来については、名刺基板の完成の記事でレビューします。
JLCPCBで名刺基板の色や厚みなどを選択
基板を発注する際はいくつかの項目を選択する必要があります。普通の基板で特に今回見栄えに関係する部分は下記です。
項目 | 見栄え | Notes |
Dimensions | 基板のサイズ[mm] | 名刺のサイズ91×55。 |
PCB Thickness | 基板の厚み[mm] | t0.8mm。手元のカードを測ってみる。 |
PCB Color | レジストの色 | 基板は一般的に緑です。今回は黒色にしました。 |
Surface Finish | めっき面の色 | HASL:銀色、ENIG:金色 |
選択後、上部にあるAdd gerber fileにKiCadから出力したガーバーデータを登録します。
KiCadでガーバーデータを準備、JLCPCBで発注する
KiCadでガーバーデータ(製造ファイル)を準備します。出力の方法はJLCPCBのTechnical Supportにそれぞれの回路CADごとにやり方が記載されていますので参考にしましょう。
基板には素子ごとのリファレンス番号(R,C,Lなどと数字)が書かれていることが多いです。名刺基板ではデザイン以外にリファレンス番号は必要ないので、今回は非表示でガーバーデータを作ります。
JLCPCBのTechnical Supportのマニュアルでは、リファレンス番号の表示にチェックが入っているため外しましょう。
このマニュアルに記載がありますが、ドリルファイルも出力しましょう。
ガーバーファイル、ドリルファイルを出力したら、KiCadの「ガーバービューアー」で作りたいように出力できているかを最終チェックをしてください。
問題なければJLCPCBのサイトにデータを登録して発注をしていくことになりますが、急いで登録してはいけません。1日寝かせて次の日に再確認するなど気分展開した後にみると意外と間違いが見つかったりします。
製造は1week前後とめちゃくちゃ早いですが、間違えるとお金も時間ももったいないので余裕をもって確認をしましょう。問題がなければファイルをホームページに記載があるようzipなどにまとめ、JLCPCBのホームページに登録して発注をします。
最後に輸送手段ですが空輸になります。一般の海外小荷物としてDHLやFedEx、OCSなどの宅配業者を選択できます。今回はOCS(ANA Groupの国際輸送サービス)を使いました。輸送時間は4~8営業日と長くなりますが、輸送コストが比較的安くて助かるのでお勧めです。
以上が完了したら「SAVE TO CART」に入れ、決済をしたら基板の発注は完了です。届くのを楽しみに待ちましょう。
電子部品とワイヤレス給電用名刺立ての素材
基板を待っている間にワイヤレス給電でLEDを光らせるための部品や名刺立てをそろえます。
電子部品に関しては、前回の記事にて回路を解説していますが、秋月電子通商で送電用コイルなどを入手しています。
ダイソー(100円均一)は素材屋さん
今回はワイヤレス給電用の台座を作るためにダイソーにて素材集めをしました。
ダイソーなどの100円均一は商品の種類が豊富にあり、ちょっとしたものをそろえるにはもってこいです。我々メイカーにとって100円均一は、便利な商品を探す場所だけでなく、素材を見繕う場所にもなります。
シールフェルトは裏面にテープがついており、はさみで作りたい形状に切って簡単に貼り付けることができます。フェルトは70cm x 60cmとサイズが大きく、作品を撮影する際の敷物として使いました。無線給電の回路を仕込むためのケースとして、糸ようじの箱がちょうどよかったため購入しています。
100円均一で完成のイメージに合う素材を探してみましょう。
Amazonなどで素材を入手
基板名刺を立てるカード立てを準備します。一般的な名刺は紙でできているため厚さが薄いです。
しかし、今回の基板名刺ではt0.8mmの一般的なカードの厚みになるため、通常販売されている名刺立てなどには入らない問題がおきます。
そのため一部加工を行って立てることができる商品を探しました。「ORIONS 豆カード立 10個入 L-30-1」をAmazonにて購入しています。
このカード立てはカードを差し込む隙間が広いですが、一部の突起で紙の厚み幅になるよう調整されているものです。その突起をカッターで削り取り、t0.8mmのサイズが問題なく入るようにできます。
まとめ
以上でKiCad(回路CAD)で作成した名刺基板の製造データで「プリント基板製作メーカ(JLCPCB)に手配する方法・注意点」と「ワイヤレス給電で基板を光らせるための名刺立ての素材」について記載しました。
ここまでやれれば自分のオリジナル基板名刺はほぼ完成になります。残りは組み立てとちょっとしたハンダ付け程度を残すのみです。
次回は最後の組み立てと完成した名刺基板のレビューをまとめます。