プリント基板で名刺を作っていきます。
まず名刺の形状を3DCAD(Fusion 360)を使ってデザインします。その後、作成した3Dモデルから形状データを回路CAD(KiCad)へ引き継げるようDXFファイルに出力します。
名刺の形状・サイズを決める

3Dモデルを作っていく上で、まずは名刺の形状を具体的な寸法でおさえておきましょう。名刺の形状はご存じの通り長方形が一般的です。
オリジナルの名刺を作るため、長方形にこだわる必要はありませんが、ここでは後述する絵柄のデザイン等がやりやすいよう、見慣れた形状の長方形とします。
名刺の一般的なサイズは、株式会社山櫻(YAMAZAKURA CO., LTD.)様のブログによると地域によって違いがあるようです。今回は日本のサイズで作っていきます。
地域 | 高さ[cm] | 幅[cm] |
日本 | 55 | 91 |
アメリカ・カナダ等 | 51 | 89 |
ヨーロッパ | 55 | 85 |
株式会社山櫻(YAMAZAKURA CO., LTD.)様のオンラインショップをのぞいてみると、いろいろな形や色、デザインの名刺を何10種類もみることができます。白地に文字だけじゃない。小口染めかっこいい。
しかし、さすがにプリント基板で作られた名刺は見当たりません。持っている人も少ないでしょうし、プリント基板の名刺はオリジナリティを出すことができそうです。
3DCAD Fusion 360のインストール
3DCADであるFusion360を使って、名刺の3Dモデルで作っていきます。
単純な形である長方形は後述する回路CAD(KiCad)でも書くことができますが、立体的に確認することができ、イメージがつきやすくなります。
また長方形でないオリジナルな形を作るうえでも応用が利くのでこちらを使ってみましょう。
Fusion360は趣味や個人的な用途で非商用で使われる場合に無償で使用することができます(22/10月現在)。個人用は機能が限定されていますが、通常のモデリングを行うことには不自由ありません。
さっそくソフトウェアをダウンロードしましょう。AUTODESKの個人用 Fusion 360のページから「利用を開始」をクリックして、フローに従いインストールします。

Fusion 360で名刺形状データを作る

基板の形状を3Dデータにしていきます。まずFusion360を立ち上げ、スケッチを書きます。上側のリボンバーにあるスケッチをクリックした後、ZX平面を選択します。

次に、リボンバーの四角のアイコンを選択し、画面をクリックして、四角を作ります。この時、特に大きさは気にしなくてよいです。

寸法のツールで、矩形の形状・位置を固定します。寸法ツールを選択後、各辺をクリックし、サイズを入力していきます。寸法の入力には数式が使えるの活用しましょう。(91の半分を入力するとき、91/2と記載してよい)

次に厚みをつけていきます。押し出しツールを使って、書いたスケッチをクリックします。距離のボックスにつけたい厚みの数字(mm:ミリメートル)を入れます。
厚みはお手元にあるポイントカードやクレジットカードをみてイメージし、どのような厚みにしたいか決めましょう。ここでは私の手元にあったカードの厚みt0.8mmを選択しています。
※プリント基板の厚みのバリエーションは決まっているため、最も近い厚みを選ぶこととなります。いくつか抜粋すると、t1.6、t0.8、t0.6、t0.4などです。

次にフィレットを使って、角に丸み(以後、R:アール)をつけていきます。フィレットのアイコンを選択後、Rをつけたい角部を4辺クリックしていきます。間違った場所をクリックしてしまったときは、もう一度同じ場所をクリックすると選択を解除できます。
モデルを回転させて見えない部分を見るには、右上の四角の上などが書かれた座標をクリックしながら回すか、マウスのホイールを回したり、ホイールのクリックを押したままマウスをを動かしたりしましょう。

Rのサイズを決めます。ボックスに数字を入れて、画面に表示されるイメージからつけたいサイズにします。

以上で、3Dモデルは完成です。次に作った3Dモデルから外形の線を抽出していきます。これは後述の工程で行う回路CADで扱えるファイルを作るためです。
まずスケッチを作成でモデルの面を選択します。リボンの中の「作成」をクリック、「投影/取り込み」の「プロジェクト」を選びます。

作った3Dモデルの面をクリックして、OKを押します。

以上で名刺の形状を線データとして作ることができました。
今回は複雑な形状を作っていません。名刺内にオリジナルの形状を入れてみたい場合は、スケッチでデザインし、形状を作ってみましょう。
一般的なモデリング操作方法を公式様でわかりやすいマニュアルを公開してくれていますので参照してみてください(レッスン2:モデリング-前編-)。もちろん今回作っている名刺の形状ではありませんが参考になるはずです。
もう少し凝ったものを題材に様々なコマンドを使ってデザイン・レンダリング(モデルをリアルに見せる処理)して学びたいという方は、書籍「Fusion360 マスターズガイド ベーシック編
」を見てみてください。
名刺形状データをDXF出力する:回路CADで使えるようにする
Fusion 360内で3Dモデルから名刺の外形を線データで作るまでできました。しかし、このままでは基板の設計をする回路CAD(KiCad)へ形状を伝えることができません。
そこで線データをDXFファイルとして出力することで回路CADで扱えるようにします。
左上のツリー内のスケッチを開いていき(▷をクリック)、作った外形の線データのスケッチを右クリックします。その中の「DXF形式で保存」を選択して、データを保存してください。

以上で3DCADでの作業は終了です。
参考に回路CADで私が作った名刺のDXFデータを読み込んでみると下記図のように表示されます。※3DCADで長手を縦方向で設計したため、名刺の形状が縦に出力されています。方向を間違えても回路CADで回転などできます。

まとめ
以上で名刺の形状を3DCADで作成し、回路CADへ引き継げるファイルを作れるようになりました。
近年は3Dプリントを気軽に頼めるサービスもあるため、3DCADを使えるようになると自由に作りたい形状をカタチにして、オリジナルのものを現実の形にすることができます。
また3Dモデルだけでもレンダリング機能を使えばリアルな画像を作れます。やり方はネット検索や入門の書籍を活用しましょう。
自分で作ったモデルをお持ちならネットで十分と思います。これから3DCADを始める・モデルはないという方は「Fusion360 マスターズガイド ベーシック編
」などの書籍で具体的な題材を元に学んでみると理解が速くなると思います。

次回は、基板名刺のデザインをPowerPointやGIMPを使って作っていきます。