3DCAD(Fusion 360)や回路CAD(KiCad)で基板を使った名刺を設計しました。文字やロゴをシルクやレジストを抜いためっきで表現、また無線給電を使ってワイヤレスにLEDを点灯させる機能を持たせています。
今回は設計した基板データをJLCPCB(基板製作メーカ)に発注しました。JLCPCBの基板の出来栄え、完成した基板名刺について紹介していきます。
JLCPCBで作った基板の仕上がり・特性


基板名刺の仕上がり
JLCPCBで作った基板の仕上がりを見ていきます。
黒レジストの質感
今回の基板名刺では、レジスト色を黒にしました。質感はしっかりとした濃い黒であり、表面の光沢感も安っぽくはありません。
また、無線給電のために作った受電コイルの配線が明らかに見えてしまうと、四角い形状が出てしまいかっこ悪いです。
ライトが近傍にある状態で反射光を観察する場合は配線が見えますが、黒色にしたことで正面から見た時、ぱっと見てわかりづらいようにできました。


シルクの質感
シルクの質感は今まで作成した基板と比較して良くできていました。シルクの厚みを大きく設定しているようで、カスレもなく、少し盛り上がったように見えます。今回のような名刺という見るものにおいては、この少し盛り上がって見えるようなシルクの質感は良いです。

参考に以前作った基板で発生したかすれについて写真を載せます。

シルクの位置ずれ
今まで作った基板を観察すると、シルクの位置が形状に対してずれることは結構発生している印象があります。今回の基板ではシルクがずれているようには見えず良い出来です。


カットの出来
外形カットなどの形状部は一般的にルータでカットされており、概ねきれいにできています。
ただ、背景(レジスト)を黒にしているということもある(コントラストがつきやすく色の違いが目に入りやすい)と思いますが、ちょっとした削りの残りのようなものが見えました。目を近づければわかる程度なので、見栄えとして特に処置をしなければならないとは感じません。

めっき面の出来
めっき面は通常はんだ付けをする部分であり、ランドの面積は小さい領域です(0.5mmピッチのICなど)。
今回は名刺基板という特別な使い方をしており、ロゴなどのめっき表現で大きいランドを作っています。製造工程でついたものだと思うのですがめっき内に跡がありました。
基板をほぼ正面から見た時にわかりますが、そこまで気になる跡ではありません。斜めから観察すると反射によって見えなくなります。もし気になる場合はステンシルを作ってクリームはんだを熱で溶かして盛ってしまうなどで対策できそうです。

QRコードの可読性
QRコードをランドで作りました。背景が黒であり、めっき面とのコントラストが十分あるためスマホのQRコードリーダーで問題なく読み取りができています。
QRコードのサイズは15mm x 15mmで作りました。十分読めることが分かったので、もう少し小さくても大丈夫です。

部品のはんだ付け時の注意
出来上がった基板の外観についてみてきましたが、次に無線給電をするためにLEDなどの素子をはんだ付けをします。はんだごてを使い、LED、ブリッジダイオードを貼り付けました。

貼り付け後を観察してみると、明らかに目立つというものではありませんが、はんだの周りにフラックスが残ってしまっています。フラックス洗浄液で除去できますが、今度はフラックス洗浄液の跡が残ります。
そのため極力フラックスが飛び散らないように、低温ではんだ量を少なく貼り付けた方がいいです。また、こてを近づけず接着できるクリームはんだを使うのも良いと思います。
ワイヤレス給電の名刺立て・台座

次に基板名刺にワイヤレス給電するための台座を作ります。部品については前回の記事で記載しましたが、秋月電子通商の送電ユニットと、ダイソー(100円均一)で集めた部品を使いました。
ワイヤレス給電はプラスチックケースを透過して電力を送れるため、送電ユニットをプラスチックケースの中に入れて外観からはコイルが見えないように配置します。送電コイルの固定は紙テープなど簡単なもので問題ありません。

今回は外部の100V電源からACアダプターを使うため外部に配線を準備していますが、もちろんプラスチックケースの中に充電池を入れれば完全に配線をなくすこともできます。
名刺基板の完成

これにて「基板でつくった名刺」の完成です!ワイヤレス給電の台座の上に名刺基板を立ててみると、問題なくLEDが点灯できました。
送電ユニットは台座の面に貼り付けているため、名刺基板を面にあわせて置くと送電効率が上昇し、より明るくLEDが点灯します。

逆に名刺基板を面に対して立てると電磁誘導がほとんどできなくなるため点灯できなくなります。取り付ける位置・角度には注意しましょう。
最後に
基板を使った名刺の出来栄えについて紹介しました。
メイカーの活動(ものづくりイベントやロボットの大会)に参加していると新しい交流がどんどん広がります。そのような場で話題作りや自己紹介をするのに役に立つのが、この名刺基板です。相手の記憶にもはっきりと残るでしょう。
展示会形式のイベントでも、作品と一緒に名刺基板を隣に添えておけば目を引いて集客に貢献できます。
ぜひ、オリジナルのデザインを描いて基板名刺を作ってみてください。